第2回「動脈がつまる病気(その1)~閉塞性動脈硬化症(へいそくせいどうみゃくこうかしょう)~」

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(1)はじめに

 動脈がつまる病気で最も重要視されているのが脳梗塞と心筋梗塞であり,これらは生命に直接かかわってくることで,その予防と早期発見は非常に大切なことです。この脳梗塞と心筋梗塞に関しては次回以降に詳しく述べさせていただくことにして,今回は動脈硬化によって上肢や下肢の動脈がつまる病気について取り上げてみたいと思います。

(2)閉塞性動脈硬化症とは

 心臓(左心室)から押し出された血液はまず大動脈を流れます。大動脈は直径約2~3cm程度の血管で心臓から一旦上方(頭方向)に向かって流れ出た後,胸元で大きく後方にカーブして背骨の脇をおなかの方に向かって下行します。途中何本かの大切な枝を出しながら徐々に細くなり,ちょうどおへその辺りで左右の足に向かう血管(腸骨動脈)に分かれます。胸元でカーブする部位(大動脈弓部)からは,太い3本の動脈が出て(内1本はすぐに鎖骨下動脈,総頸動脈に分かれる)上肢と頭に血液を送ります(図1)。  この左右の鎖骨下動脈あるいは左右の腸骨動脈より先の動脈が動脈硬化により狭くなり血流障害を生じたものがいわゆる閉塞性動脈硬化症です。もっとも脳梗塞や心筋梗塞も動脈硬化で血管がつまるという意味では閉塞性動脈硬化症なのですが,一般的には四肢(下肢が圧倒的に多い)に関してのみ,この病名が使われています。

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(3) 症状

 症状としては,患肢(動脈硬化のある上肢,下肢)の冷感,しびれ感,痛みが主体で,運動により症状が強くなり,休むと症状が改善するのが特徴的です。これを専門用語で間欠性跛行(かんけつせいはこう)と呼び,運動により酸素消費が増大したにもかかわらず血管の狭窄や閉塞のために十分に血流が維持できないことが原因です。さらに症状が悪化すると,安静時にも症状が出始め,さらには指先や足が壊死を起こしてきます。  動脈硬化はあるが自覚症状のない時期にこの病気を発見するのは難しく,間欠性跛行が生じてはじめて病院を受診されることが多いようです。しかし,この時期にも無意識のうちに本人の行動力が低下し,筋肉がやせてしまうことにより血流不足が改善し,十分な治療を受けずにすごされる患者さんも多くいらっしゃいます。

(4)脈の診かた

 では,早期発見は困難なのでしょうか。いいえ,決してそうではありません。まずは,脈を触れてみましょう。脈は手首以外に触らないと思っていらっしゃる方もいますが,注意してみると全身のいたるところで触れることができます。そのうちで最も簡単に触れることができるのが上肢であれば橈骨動脈,下肢であれば足背動脈です。橈骨動脈は手首の内側・親指側の動脈で簡単に触ることができます(図2)。足背動脈の方はご存知でない方も多く,これも比較的簡単に触ることができますのでぜひとも覚えておいていただきたいと思います。場所は足の甲で第2趾を手前にたどって,ちょうど靴の縁が当たるあたりになります(図3)。一度覚えると簡単に触れますし,自分だけでなく家族の方のを触ってみてあげても良いでしょう。これは解剖学的には前脛骨動脈にあたり,動脈硬化に巻き込まれやすい血管の一つです。  これらの血管で脈を触れなかったり,弱い感じがするときにはさらに血圧を測るとはっきりします。最近は左右の上肢・下肢の血圧を一度に測定し,血管の狭窄・閉塞を診断するとともに,脈派の伝わる速さでもって血管の硬さを診断する装置もあります(図4)。

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(5)治療に関して

 閉塞性動脈硬化症の治療方法も近年大きく変化しました。人工血管を使ったバイパス手術に代わって,カテーテルを使った血管内治療(バルーン血管拡張,ステント留置)も多くおこなわれ,内服による治療もすすんでいます。しかし,もっと大切なことは,閉塞性動脈硬化症と診断された人は,心臓の動脈(冠状動脈)や頚動脈,脳動脈にも同程度の動脈硬化病変が存在する可能性が高いということです。閉塞性動脈硬化症と診断されたときは,「心臓と頭も十分に注意しなさい」と警告されていると思わなければなりません。

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