第4回「動脈がつまる病気(その3)」 ~虚血性心疾患(きょけつせいしんしっかん)~

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1. 診断に関して

 a)安静時心電図検査 胸痛を訴える患者さんが外来受診された場合最も大切なことは,胸痛の原因が心筋虚血によるものかどうかという事と,心筋虚血が持続しているかどうかという点であります。心筋虚血の場合一般的に数分以内に治る一過性の胸痛は狭心症と考えられ,胸痛が15分以上も続くようであれば心筋梗塞の可能性が高くなります。従って狭心症の場合は外来に来院された時点で症状がなくなっている場合も多く,また安静時の心電図では診断がつかないことが多々あります。もちろん痛みの持続する心筋梗塞では多くの場合心電図で異常が発見されますから,急いで緊急処置の出来る病院に搬送となります。

 b)負荷心電図検査 狭心症が疑われる患者さんに対しては,次のステップとして負荷心電図検査といって心臓に負荷をかけて心電図検査を行います。トレッドミル検査はベルトコンベアの上を歩いたり,走ったりしながら負荷を調整しつつ心電図を記録します。ただし,この検査は足の不自由な人には出来ませんし,また専門医の厳重な監視の下に行わないと危険な面もあります。その他にホルター心電図といって,長時間記録できるポータブル心電計を装着していただいて,日常生活の負荷の中で心電図変化がないかをみる場合もあります。最近の医療機器の進歩でホルター心電計はマッチ箱程度にまで小さくなってます。

holter 図1.ホルター心電計

 c)心臓超音波検査 これは冠状動脈そのものを診断するわけではなく,心筋の動きや厚さを見ることにより,心筋虚血や古い心筋梗塞の有無を判断します。虚血性心疾患にあっては診断の傍証となることが多く,強い心筋虚血(切迫梗塞や梗塞)でない限り,診断に直結することは少ないのが現状です。

 d)心筋シンチグラフィー 放射性の物質を注射し心筋に取り込ませることにより,心筋の虚血を判定します。専門のクリニックで行う場合もありますが,一般のクリニックで行えるのは,c)までです。

 e)心臓カテーテル検査 上肢(手首や肘)あるいは下肢(ソケイ部)の動脈よりカテーテルと呼ばれる細い管を血管内に挿入して行う検査です。心臓の収縮力や冠状動脈の狭窄・閉塞を造影剤を使うことによって直接描出します。この検査法は進化し直接カテーテルを用いて血管の治療まで行うようになっています。検査だけの場合1泊2日の入院あるいは2泊3日の入院で行っている施設が多いようです。

2. 治療に関して

 治療は内服だけによるものと,血管形成術・血行再建術がありますが,それぞれの利点を生かして治療方法が選択されています。血管形成術とはいわゆる風船療法で,循環器科の専門医がバルーンカテーテルやステントを使って冠状動脈を中から拡張する治療です。血行再建術とは外科医が手術で血管をつなぐ治療方法です。ここで大切なことは,この治療方法の選択にはある程度のコンセンサスはあるものの,バルーン血管形成術が得意な施設と手術が得意な施設で担当する先生の薦める治療方法が多少異なる事でしょう。私が数年前までいた施設では,まず内科・外科で十分検討した上で治療の選択に迷う場合は,血管形成術担当の内科医と手術担当の外科医の両方で患者さんにお話をしていました。  結局両方の治療方法を組み合わせて,まずは血管形成術を選択し,緊急時あるいは治療が不十分に終わった時に手術を考慮するといった場合が多かったようです。しかし最近マスコミで「心臓を止めないで行うバイパス手術」が取り上げられるようになり,今後最初から手術を希望される患者さんも増えるのかも知れません。  肝心なことは,血管形成術が不成功に終った場合,最悪その血管は一時的に閉塞してしまう可能性があるという点と,その血管が閉塞した場合の危険性を厳密に判断することでしょう。その点に関して,治療を受ける患者さんはしっかり主治医に確認しておく必要があり,あいまいな回答しか得られないような施設での治療は遠慮した方が無難でしょう。

PTCACABG 図2.血管形成術と血行再建術

3. 虚血性心疾患のまとめ

 虚血性心疾患の多くは動脈硬化により冠状動脈の血流が悪くなって発症するわけですから,動脈硬化の素因のある方は,狭心症の段階でちゃんと精密検査に結び付けてもらうことが重要となります。もちろん心筋梗塞では一刻の猶予もなく専門施設での治療が必要となります。定期健康診断で行う心電図で注意が必要(要指導)とされた方は一度専門医に相談されることをお勧めします。

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