電子カルテ導入記(2)

 さて、当院に導入した2代目となる電子カルテであるが、前回述べたように日本医師会(正確には日本医師会総合政策研究機構:日医総研)の提供するORCAというレセコンソフトと連動して運用するものである。これは維持費の面からと今後の展開を見越した上からの選択である。名前は@homeDr(アットホームドクター)と言って、お世辞にもメジャーなものではない。当院でお願いしているFALCOという検査会社が提供元となっており、他にも検査会社の提供する電子カルテもあることからみてバックはしっかりしており、いい加減なものではない。当院で導入したときは丁度会社が関東圏でも電子カルテ事業を展開していこうという時期だったと思うが、まだインターネットで簡単な説明がある程度の紹介であった。

 では、なぜそんなものを導入する事になったかというと、簡単に言えば素性の良さを感じ取ったからである。もう少し説明すると、最初はかなりの『作り込み』を要するが、いざ手になじんでしまえば自分の手足として十分に働いてくれる様な予感がしたからである。なんとも、心許ない動機ではあるが、もともとどの会社の電子カルテを見ても痒いところに手が届くような製品は見たことがない。洋物テレビドラマのDVDに出てきそうな近未来的な操作性を期待するのはまだ時期尚早なのであろう。 良く、電子カルテを導入するときには目的をしっかり定めてから導入するようにと言われてきた。これは過去からの『絶対真理』であり、確かに何となく導入したのでは何となく終わってしまうのである。それこそ電子カルテではなくレセコンに毛が生えたもので終わってしまうのである。ただ、目的がレセコンに毛が生えたもので良いのであれば、それはそれで現在の電子カルテでも十分使い物にはなる。

 では当院での電子カルテ導入の目的はというと、一言『省力化』につきる。事務員一人、看護師一人、医師二人という環境にあっては、分業というのは成り立たない。昔はこれで院内処方であったから、もっと大変であったが、会計時に明細書を発行するようになって、さすがに院内処方はあきらめて院外薬局にお願いすることになった。数年前の話である。受付では処方箋を発行すれば良くなったが、ご存じのように人相手の仕事は接客である。来院時に機関銃のようにその日に欲しい薬を告げる人もいれば、古い期限切れの保険証を持ってくる患者さんもいる。そのすきに診察券と保険証を重ねて受付にそっとおいて受付を済ませたものとして待合で待っている人もいる。そしてそこへ問い合わせの電話がかかってくるのである。これはどう見ても一人でこなす仕事ではない。受付はどう見ても二人か三人は必要である。 この間、医者と看護師は何をやっているかというと、もちろん診察に当たっているのであるが、その業務も多岐にわたる。健康診断などが間に入った場合は、レントゲン・心電図・採血・尿検査、おまけに身長・体重・腹囲測定まである。これまた、一人専属の人員がいた方が良さそうである。前に一度、他の開業医に聞いたとがある。『予約で診療しているそうですが、飛び込みで健康診断をやってくれと言う患者さんがいらした場合、どうしていらっしゃいますか?』。当院では迷わず受付が『予約制です』と言って断っている。食事も抜きで来ている訳だから、『少し待ちますが、それでもいいですか?』くらい気を利かしてもいいと思うのだが、そんな気持ちの余裕はないらしい。で、その先生は予約の合間に何人であろうと受け付けているとのことであった。よほどスタッフの教育が出来ているようである。おそらく待ち時間でいらいらしている患者さんなどの顔色を察して、うまく声かけをするくらいの技量を持ち合わせているスタッフばかりに違いない。

 話がそれたが、当院では予約診療はしていない。もちろん高血圧や高脂血症など内科疾患の患者さんや定期的な理学療法が半数位なのであるが、あと半数はいわゆる怪我や急な頚部痛・腰痛、関節痛、筋肉痛、皮膚疾患など定期的な受診ではない。理学療法で毎日のように時間も同じような時間に受診する患者さんは混雑する時間を知っていて、うまくそれを外して受診してくれる。問題は急に創を縫ったりする必要が生じた場合だ。時間にして10分位であろうが、その間は医師と看護師が手を離せなくなる。受付一人が切り盛りするわけであるが、その間にも問い合わせの電話がかかってきたりする。かといって、天気や曜日によっては暇なときもある。病気を診ていて天気に左右されるというのも情けないが、雨や台風の日にわざわざ腰に電気をかけるためだけに来る患者も少ない。 要するに医師も含めてスタッフ全員の仕事が量的にも時間的にも均一ではないのである。そうすると、人員は余っていても良いから忙しい状態に合わせて配備するのが一番良いのではあろうが人件費が馬鹿にならない。何とか仕事量を減らしてやりくりするためには、うんと効率が良い体制にしなければならない。要するに分業して効率を上げるのではなく無駄を省いてかつ労力を流動的にして、密度の高い仕事をする努力が必要なのである。一人に仕事が集中しているときは、その作業を周囲が肩代わりしてこなせるようなシステムが必要なのである。 具体的に言うと、受付が新患受付をしている間に入力が終わった患者さんの会計を看護師がしたり、その間に医師はカルテの記録部分の入力をしたり、時によっては会計部分の入力を手伝う事になる。要するにカルテの記録部分は医師しか入力しないが、その他の業務はスタッフ全員がこなせるようになっていなければならない。自分は診察しかしない、会計部分は触らないという医者のわがままは当院では成り立たないのである。そうすると、当然カルテの記録部分は綿密に入力できなくなるのであるが、それは紙カルテにキーワードをメモしておいて診療の合間のちょっとした時間に入力する。私から見れば『自分はブラインドタッチが出来るから、リアルタイムで患者とのやりとりを入力している』などというのはあり得ない。医者は患者を診るときは五感(時には第六感)を働かせて診察するもので、同時に入力など出来るものではない。ブラインドタッチというのはキーボードを見ないと言うだけであって、目はパソコンの画面の字を追っているのである。その間は患者さんの表情や所作を見逃していてブラインドドクターになっているのである。

 次回からは具体的にパソコン画面を示しながら、現在の運用形態や問題点を記録していく予定だが、今回は基本画面だけ掲載しておく。

ORCAと@homeDr

 この画面(ORCAと電子カルテ)が受付・第1診察室・第2診察室の3カ所に常時表示されており、それぞれ、受付(嬢?)、看護師、医師(私)が必要に応じて操作している。又、受付にはこれらとは別にORCA専用のクライアントがあり、受付や会計専用に使用している。

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