ペットの異変

ここ数ヶ月の間に飼っている動物にいろいろ変化があった。

1匹は長年飼っているビーグル犬である。だんだん歩けなくなって、朝晩の散歩も時間がかかるし、おまけに食がめっきり細くなってしまった。便も下痢のような便を頻回にベランダにしているし、これはもう寿命も近いのでは思っていた。食べない割にはお腹は凹んでこないし、腹圧もかけられなくなったのではと思っていた。とうとう散歩に出かけても抱いて帰るような状態となり、無駄かも知れないけど新しく見つけた獣医さんに連れて行くことにした。
ペットクリニックには狂犬病の予防接種のシーズンなのか、待合の椅子が一杯になるくらいの保護者付きのペットたちが並んでおり、きょろきょろはするが、みんなおとなしく順番を待っている。床でハァハァゼコゼコ言いながらうろうろしているのは、うちのビーグルだけである。このおとなしいペットたちはきっと自分は犬や猫だとは思っていないに違いない。もちろん、長年一緒にいるペットはいつの間にか家族の一員となり、待遇も家族並みになってしまうものだから、人とか犬とか区別していないに違いない。主人の言うことは聞かなければならないし、知らないところにいるときは、とりあえず主人の膝の上に座っていれば安心なのである。
ひとしきり待って、ようやく診療終了(PM7:00)の少し前になって診察室に呼ばれた。診察室には、パソコンとレントゲン表示用のモニタ、角には超音波検査機器が置いてあり、そのどれもが最新式のものであった。診察台の上に上げられ、ひとしきりお腹を触って診て『ずいぶんお腹が張っていますね。』と。最近の食欲低下と下痢様の便しか出ていない状況を説明して、とりあえず超音波検査をして貰う事になった。プローブを当てた瞬間、パンパンに張った腸管様のしこりが描出され、『子宮蓄膿症ですね』との診断が下された。このビーグルはもう13才を超え、人間で言うと80才近いおばあちゃんである。子犬を産んだ事はない、文字通りの箱入りばあさんである。結局、緊急手術をしていただいて一命を取りとめた。今では年下のチワワと同じくらいのスピードで歩けるが、そこら中嗅ぎ回るので、散歩は前にも増して大変である。

もう1匹は、5年位前から飼っている亀である。クリニックの看護助手が拾ってきた物(者)で、いつの間にか『カメ太郎』と呼ばれて、順調に成長してきた。もう片手でつかみ上げる事が出来なくなる位に成長して、今は真上からはこっちの手幅が足りなくてつかめない。横から本の様につかんで、別の入れ物に移動させて水槽を掃除している。 10日くらい前から、こいつも食べなくなった。まだ朝晩少し涼しくて、昼間は暑いくらいの日が続いたので、お腹の調子を崩したかと考えた。
こういうときは絶食に限るが、1週間近く何も食べないでいると心配になってくる。便も殆どしないので、これも腹の中に何かがつっかえたのかと考えた。インターネットによるとカメの腸閉塞とあって、手術の事なども書いてあるが、拾ってきたカメにそこまでやるのかと考えあぐねていた。でも、このまま具合悪くなって死んだりしようものなら、一番かわいがっている看護助手がショックで働けなくなっても困ると思っていた。
そうこうしているうちに、ある朝水槽の水場に白い丸い物が大小複数個あるのが発見された。どうやら卵らしくて、カメが産み落とした物らしい。『カメ太郎』などと呼んでいたものだから、てっきりオスとばかり思っていたが、どうやら女性だったらしい。でも、こんな大きな物がどこから生まれ出た物やら。今は、カメの名前を変えなければと職員一同思案している。

短期間で、2件とも婦人科?系統の病気と言うか異変であった。『女性の腹痛を診たら妊娠と思え』というのは、医学生の頃からの基本中の基本である。動物とは言え、こんなことにも気付けなかったのは、医師としてまだまだ未熟者であると悟った。

 

Follow me!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です