宮島(弥山:みせん)登山

 ここのところハイキングや山登りに行く機会が増えて、どういうわけか今年のお盆の帰省は宮島に行くことになった。日本三景の一つ、世界遺産の『宮島』である。田舎が広島(東広島市)なので、これまでにも何度か行ったことはあるし、たぶん幼稚園に通っていた時分にも家族で出かけたことがある(らしい)。状況は良くは覚えていないのであるが、恥ずかしながら、そこで私が迷子になったそうである。宮島の話が出るたびに、そのときの話題が出て、今でも酒の肴にされている。従って、私にとっては『宮島』はしばらく近寄ってはいけない場所、特に『弥山』(みせん:宮島の中央部にある古くから信仰の対象となっている山)などは話題になって欲しくない場所であった。聞くところによると、家族で『弥山』に登って、その下山途中、私が飛行機のまねをして両腕を真横に広げて『ブーン』と駆け下りたらしいのである。その後、いくら待っても家族は降りてこないし、最後は出店の茶屋の縁台に座らされて、店の人にラムネをごちそうになっていたらしい。それ以来、何度もその話を聞かされるものだから、今ではそれが自分の記憶なのか家族から聞かされた話なのか区別がつかなくなっている。まあ、泣きもせずに(最初は泣いたのかも知れないが)ラムネを飲んで待っているあたり、後に大物(?)になる片鱗を見せていたのかも知れないが、この年になるまで『宮島・迷子』の話はついて回っている。
 私の両親も亡くなって、だんだん自分の子供の時の話も出なくなって、まあ次の世代のために宮島には一度は連れて行ってやりたいと思ったのであるが、広島の実家に手伝ってもらって下準備は万全に整えた。広島プリンスホテル(宇品港のすぐそば)から、高速船に乗り一気に宮島上陸を果たすパターンである。普通は電車で宮島口まで行って、フェリーで対岸の島に渡るのだが、この高速船は本当に高速でほんの30分もしないうちに島に着いてしまった。ちょうどお昼頃が干潮の時間帯で、うまくすれば海の中の大鳥居のところまで歩いて行けるはずである。ネットでこの時期の潮位が日にち単位で掲載されており、これも下調べに落ち度はなく、予想どおり大鳥居まで歩いて行くことが出来た。この鳥居から見上げる『弥山』(標高535m)は気のせいか神々しく、厳島神社の回廊を回ってゆっくりお昼でも食べて帰るのも有りだと思っていた邪念が吹き飛んだ。これは、頂上まで登るしかない。
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 厳島神社の回廊を横目に見ながら、少し歩くとロープウエー乗り場までのシャトルバスの発着所があった。ここで炎天下少し待たされたが、なんとかバスに乗ってロープウエー乗り場に着いた。お盆休みとあって、ここも長蛇の列で、乗り込むまでに約30分かかった。後で考えれば、ここの30分が後の行程にひびいて来るのであるが、まあ、なんとしても頂上を目指そうということになった。ロープウエーは途中でやや大型のものに乗り換えて山頂を目指すのであるが、ロープウエーの終点から『弥山』の山頂までは、まだ大分ありそうである。下から歩いて登ってくる人もあるくらいだから、頂上近くまでロープウエーで楽をした身から考えれば、残りの1km(標高差は100m位か)は全く問題ないはずであった。が、頂上に近づくにつれて、日光を遮るものが少なくなり、折からの真夏日である。しかも、ロープウエーを降りてから、すぐに登り始めるのではなくいったん数百m下ってからまた登ることになっていた。これが意外にきつく、ようやく弥山神社(山頂まではまだ数百mの地点)に着いた頃には、家族全員息が上がっていた。ここから山頂までにはいろいろな岩や社があり、霊峰の名にふさわしい場所があるはずなのだが、時間的に帰りの高速船に間に合わないという結論に達し、結局登頂はあきらめた。
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 帰りも、時間を気にしつつ半ば駆け足でロープウエー乗り場にたどり着き、ロープウエーの中で息を整えながら、水分補給しながら到着を待った。ロープウエーを降りてからは『紅葉谷』を一挙に駆け下りて厳島神社まで降りてきた。この時点で、帰りの高速船の出発時刻になってしまい、結局船着き場まで10分の地点で、乗り遅れる結果となってしまった。ただ、ちゃんとバックアッププランは用意してあり、フェリーで宮島口に渡り、JRで広島駅まで戻り、帰りの新幹線には余裕で間に合った。反省点としては、お盆の行楽シーズンにもかかわらず、無謀な時間設定をしたことがあげられる。でも、ぎりぎり間に合わなかったとはいえ、今回の強行軍をなんとかこなしたという満足感は残った。帰りは、すでに潮が満ちていて大鳥居も海の中に浮かんでいた。
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 それにしても、この年になって『紅葉谷』を再び『ブーン』と家族で駆け下りるなんてことは想定外であった。
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