富士山すそ野ぐるり一周ウォーク(第1回)

事の初めは富士山が世界遺産に登録された時からである。家内との会話で、「一生に一度は富士山に登っておかなければね」というのは何年も前から話には出ていたが、登るとしたらいわゆる『弾丸登山』を敢行する自信がない人は泊まりがけということになるらしく、これまた実行するにはかなり勇気がいる。それに、世界遺産に登録された今となっては、季節も季節だしものすごく混んでいるだろうというのが一般の予想である。 もともと、運動と言えば毎日朝晩の犬の散歩ぐらいで、もちろん雨の日はお休みであるし、朝寝坊したときはショートカットコースを大急ぎで回るくらいのものなので、犬も含めて完全に足腰は鈍っている。 年に一度位、遠出と称してハイキングに出かけることもあるが、鎌倉散策の時も、高尾山に登った時も、翌日は筋肉痛が生ずるものの、その後の1週間位は体が軽くなったようで、いかに日頃の運動が足りないかを思い知らされる。

そういった折、家内が『富士山すそ野ぐるり一周ウォーク』なるものを見つけてきた。ネットで検索したものか、どこぞでパンフレットでも貰ってきたのか知らないが、富士山のすそ野、全長153キロを全17回に分けて一周する歩き旅らしい。もちろん現地(出発・到着地点)まではバスでの往復であるが、そこで毎回約8~9kmを富士山を仰ぎ見ながら歩くのである。1回あたり距離的にみて、正味2時間~2時間半くらいの歩行であろうか。これなら、年に1回行っている遠出とあまり変らないし、参加してみる方向に少し気持ちが傾いてきた。今年は夏が長く、まだ決してハイキング日和とはいかないが、連休も多いことだし、まあ初回だけでも参加してみようかということになった。断っておくが、あくまでも家内の方が乗り気であって、私の方はついて行く程度の事と考えていた。いつの間にか私用に大きめのリュックサックが買われているし、どうやら家内の小さなリュックに入らない弁当や水筒を入れて私に持たせるためのものらしい。

富士山すそ野一周マップ

当日は横浜からバスが出たが、集合地点でまず思ったのは、女性の参加がすごく多く7~8割方女性と言ったところか。平均年齢はたぶん60才半ばと言ったところで、我々アラ還60前は、むしろ若い部類に属すると思われた。

大型バスほぼ満席の44名の参加者によるバス旅は、横浜新道、保土ケ谷バイパスを経由して東名高速を走り、御殿場インターから138号を通って富士吉田まで続いた。 第1回目のスタート地点は北口本宮富士浅間神社であるが、行きのバスの中で既に当日のコースの資料(といっても簡単なコピーだが)をもらって説明を受けており何の問題もなかった。ただ、途中で配布されたガイディングレシーバーなるものの調子がすこぶる悪かった。携帯電話くらいの大きさにイヤホンが付いたいわゆる一方通行のトランシーバーなのだが、家内のものが20m位離れてもガイドの説明が聞こえるのに、私のものは5mも離れると音が途絶え、しかも間に人が入るとほんの2~3mでも音が聞こえない代物であった。通信はデジタルらしく聞こえるときはブチブチいっても何とか言葉の判別は出来るが、聞こえないときは全くだめであった。どうやらハズレを引いてしまったらしい。予備のものはないらしく、発信器(ガイド)の方の電池を入れ替えたので様子を見てほしいとの事であったが、まあ私に言わせればこれは電池の問題ではない。センター試験でも英語のヒアリングでレシーバーの不具合で良く聞こえなかったという話があるし、昔はこんなものはなくて、ガイドの話をちゃんと聞きたければガイドのそばに行けばいい話であるし、あまり問題にしなかった。というより、なんとかひめのみこと(失礼に当たるといけないので正確には木花開邪姫命)などの話より、富士山がどう見えるかの方が重要であった。

ところが、歩けども歩けどもいっこうに富士山は見えてこない。台風の遠巻きの雲による前日の雨はすっかり上がって、当日は雲の隙間から時々日が差す位の天気で、もしかしたら雲の隙間からきれいな富士山が見えるのではと期待していたが、結局富士の全体像は見えずじまいであった。唯一忍野八海を回ったときに、庭園から一瞬裾野と山頂がわずかに見えた程度であった。まあ、最初から絵に描いたような富士山を見ると言うのも虫のよい話ではある。何せ霊峰だし、世界遺産なのである。

どれが富士山?

ウォーキングに関しては最初、他の参加者で脱落者が出るのではないかと心配したが、昼食を挟んで午前午後歩いて、結局全員が完歩できたし、最終的には足が張って限界に達している自分もその中にいた。

帰りはバスで『紅富士の湯』という温泉施設に寄り、温泉にゆっくりと入って汗を流した。その後、家内の長湯を待っている間に大宴会でも開けそうな大広間の畳の上にくつろいでビールを飲み肉うどんを食べた。久しぶりに昔ゴルフに行ってあちこち走り回って、一風呂浴びた後の打ち上げの一杯の爽快だったことを思い出した。心地よい疲労感が何ともいえなかったが、畳の上で寝転がると下腿は今にもつりそうであった。これくらいのウォーキングで最後はこのありさまである。日本映画の『たそがれ 清兵衛』での一コマを思い出した。「いかん。なまっとるのう。」

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